誰もいない街

2025-02-10

7日前に書いた自分の文章は驚くほど覚えていない。一昨日くらいのものでも怪しい。だから割と新鮮な気持ちで過去の日記を読むことができる。



以前、家の近くに後輩が住んでいたことがあった。僕の家は何でもない駅からしばらく歩いたところにある坂の上にあり、後輩が住んでいるアパートはその坂の始点にあった。そのアパートから彼が出て行ってしまったのももう半年以上も前のことだ。彼は学校を卒業して荷物をまとめて出て行った。それから彼に会ったことは何回あっただろう?たしか2回か3回かそれくらいだった。僕の住んでいる町には何もあるわけではない。みんな隣の町に住んでいた。僕の町はそこまで栄えていない町を隣町に持つ、より栄えていない町だった。ともかく、それから町に住んでいる知り合いは誰もいなくなった。僕はずっとこの街に住んでいる。そのため、厳密に言えば小学校の同級生とか昔の知り合いの中にはまだ町に住んでいる知り合いもいるだろう。でも思い当たる知り合いでここに住んでいるのは後輩だけだった。そして彼もアパートを出てしまった。隣町に住んでいる友達の妹だけがなぜかアルバイトをしにわざわざこっちの町まで来ている。彼女は長い間(僕の町にある、何でもない駅の)駅前にある店で働いているらしいが、僕はその店に一度も入ったことがなかった。なんとなくこれからもその店に入ることはないのだろうと思う。前は家を出て散歩をするときもいちおう髭をそらないとという気がしたが、今となってはその必要もない。それは誰もいない街だからだ。